Day 2nd

釣行2日目、Markが朝4時半にセットしたアラームで目が覚める。しかし、アラームが止まってから訪れるのは静寂ではなく、屋根を打つ激しい雨音。とてもではないが、外に出ようという気になるような雨量ではない。Markが、なにやらブツブツ言いながらアラームをセットしなおしてベッドに戻った。もちろん、こちらも無言でその案に賛成し、ベッドに戻る。昨日の疲労をとるために一秒でも長く寝ていたいのも、また本心なのである。

リセットされたアラームが鳴ったのは、朝7時半。外を見ると、曇り空ではあるものの、もう雨は降っていないようだった。顔を洗い、サンドイッチを3個つまんで歯を磨き、Lottin Pint Motelを後にする。今日は、Cape Runawayの地磯に向かうためである。

Cape Runawayは、Markの友人の牧場主の敷地内にあり、彼の許可を得てからの釣行となる。牧場内を豪快に四駆で駆け抜け、一路ポイントへ。

Cape Runaway西側の地磯からの風景。奥の山の左側に車を停め、ここまで歩いてきている。15分ほど歩いたが、昨日のLottin Pointに比べれば天国である。Markによれば、キングフィッシュはこの湾沿いに泳いでくるという。一緒にいた2日間、とにかく沖ではなくて岸際をトレースするようにアドバイスされた。日本でのヒラス攻略のヒントになるかもしれない。
道中、車内でMarkからこのポイントの説明があった。

「一見すると、とてもキングフィッシュが回遊するポイントには見えないと思う。水深も浅いし、ワンド内だから、日本で言えばクロのポイントみたいに見えるだろう。しかし、ここはキングフィッシュの好ポイントなんだ。どちらかと言えば、3〜5kgのサイズが多いけれども、過去には20kg台もランディングされているし、すぐ先の沖磯では42kgの化け物サイズも揚がってる。」

出発前、ネットで見たとんでもないサイズのキングフィッシュ。あの魚が揚がったエリアに行くことができると思うと、興奮を抑えることができない。たとえ、状況は厳しいとわかっていても。。

そう、昨晩からの豪雨により濁りが出てしまっているのである。さらに、北西風が強く吹きつけ、濁りを岸際に押し寄せてしまっている。この地域では、初夏の北西風は冷たい風であり、水温をも下げてしまうという。

いかにNZといえども、好条件が揃わなければショアからキングフィッシュを狙うのは難しい。日本で散々ショアフィッシングをやってきた経験から、それは重々わかっている。だけれども、日本からここまで遥々来た自分に出来ることは、わずかな可能性に掛けてひたすらヘビータックルを振り続けることだけである。昨日、惜しくも逃してしまった獲物との再会を果たすために。。

沖に見える離れ磯が、42kgのレコードフィッシュが揚がった磯である。Markの友人のボートで渡してくれるそうだが、あいにくこの日は波が磯まで這い上がっており、上礁できる状態ではなかった。
しかし、状況はやはり厳しい。普段、ここには大量のアジがいて、それを狙ってキングフィッシュが回遊してくるらしいのだが、Markがいくらマキエを巻いてもアジの姿が見えない。もちろん、水に濁りが入っているため水中の様子は完全にはわからないのだが、どうも海に活気がない。。

Markもそれを察しているようだが、彼の仕事は「釣れない」と諦めることではなく、「釣れる」可能性を1%でも上げることである。そしてそれは、アングラーにあくまでもポジティブな思考を抱かせることによって可能となる。

Markは繰り返し言う。

「確かに水色はよくないなぁ。でも、この濁りでも過去にキングフィッシュは釣れているんだ。以前あるアングラーがここに来たときもこれくらい濁ってて、彼はこれじゃ釣れないだろうと言ってすぐ諦めてた。でも、それから5分くらいして同行していたアングラーに25kgくらいのキングがヒットしてね!!(笑) だから、この濁りの中でキングフィッシュが回遊してきたとしても、決して驚くことじゃない。」

Markとはまだ2日余りの付き合いだが、彼が嘘をつくような人間でないことはもうわかっていたから、彼の言葉を信じて、ひたすらロッドを振り続けた。ここは水深がないので、ポッパー一本勝負である。ポッパーの後ろに青い影を探し、神経を研ぎ澄ませ、一投一投に魂を込める。

午後3時過ぎ、潮が下げに変わってから、濁りがほんの少し沖に出て行った。「もしかしたら。。。」の気持ちを棄てず、キャストを繰り返す。だが、やはり海からの返事はなかった。

午後5時、ついに納竿の時間となってしまった。Markにガイドしてもらうのは今日までで、明日は自分一人での釣行となるため、今日中にファカタネまで戻らなければならず、早めに切り上げる必要があったのだった。

釣りをやめて帰り支度をする前に、Markがこう言った。

「I'm very sorry... 最後の30分、ずっと神に祈ってたよ。『彼は頑張った。キングフィッシュを得るに値する。だから、彼にキングフィッシュを与えてくれ』ってね。でも、駄目だったなぁ。。」

Markはベストを尽くしてくれた。この日このポイントを選んだのも、風向きの関係からここがベストだと確信してのことだったし、この日は自分はほとんど釣りをせずにずっとガイドに徹してくれた。だからこそ、彼には感謝していたし、彼のためにももう一度キングフィッシュを掛けたいと思っていたのだが、それは残念ながら適わなかった。

ファカタネまでの道中、ずっとキングフィッシュに関する話で盛り上がった。話を聞けば聞くほど、やはり釣り上げてみたい。尊敬するに値する魚、そう思わせるターゲットである。明日も北西風の予報で、おそらく状況は今日以上に厳しいに違いない。しかし、自分にできることは今日と同じく、ただ信じて投げ続けるのみである。

ファカタネのMotelに到着し、Markに別れを告げる。自分が日本人であることを考慮して、わざわざバスタブのあるMotelを予約しておいてくれた。本当にいいヤツだ。別れ際、不意に「Mark Draperに会えてよかったかい?」と聞かれ、迷わず「ああ、もちろん」と答えた。釣果は抜きにしても、いい出会いだった。そして願わくば明日、キングフィッシュとの新たな出会いがあることを信じて、束の間の休息をとることにした。

タックル1
ロッド シマノ オシアGT 97RS
リール ダイワ ソルティガZ 6000GT
ライン バリバス アバニGT 8号(100lb)
リーダー バリバス ナイロン 80号(220lb)
ルアー カーペンター シーフロッグ120

タックル2
ロッド ザウルス GT-Expedition 10
リール シマノ ステラ16000H
ライン よつあみ ウルトラキャストマン 6号(86lb)
リーダー デゥエル フロロ45号(120lb)
ルアー タックルハウス K-TEN ブルーオーシャン175 WORKS