---vol.4---

Day 4

【about to give up】
とうとう迎えた最終日。朝一のプライムタイムを撃つため、朝6時半に宿の前に集合し、バリーのボートに荷物を積み込む。目指すは、2日目の午後に乗った沖磯。そのときは小型のヒラマサしかヒットしなかったものの、ここ3日間釣りをしたなかでは一番活気のある海だったため、ここを朝マズメに攻める作戦である。この日は風が強く、瀬付けのときにボートが風に押されるほどだったが、この沖磯は波裏に位置しており、周りの海は凪いでいる。

釣りを開始してすぐ、2日前との明らかな違いに気づく。あれほど群れていたカウアイが1〜2匹しかいない。カウアイは海況を反映するバロメーター。海の状況は日に日に悪くなっているようだ。満潮から下げに入ると、カウアイは完全に姿を消してしまった。潮位が下がるだけで、まったく潮が流れていない。もちろんヒラマサの気配など皆無。

『ここにすべてを賭けていたのに。。。』

言葉にこそ出さないが、誰もが絶望しかけていた。

【the very last chance】
沖磯はアザラシの住み家だった。
このまま今遠征を終えるのだけは耐えられない。たまらずバリーに瀬代わりをお願いする。別の磯に移動したかったというよりは、目の前にある無慈悲な現実から逃避したかっただけかもしれない。

唯一のポジティブな要素は、朝あれほど吹いていた風が完全に止んでいたこと。他にどこか乗れる磯があるかもしれない。ダメ元で、2日目に乗れなかった外洋に面した沖磯に向ってみる。近くまで行って様子を伺うと、驚くことにウネリはほとんどとれていた。乗れる、これなら乗れる!! バリーに上礁の意志を伝え、磯に乗る。回収までの残り時間は2時間半。これが正真正銘、最後のチャンスだ。

眼前に広がるは、紺碧の海。これまでに行ったニュージーランドのどの磯よりも、圧倒的に、遙かに海が青い。沖潮の当たり具合がまったく違う。しかもこの磯、なんと野生のアザラシの住処となっていた。周辺に魚が豊富にいて、人手もほとんど入っていないのだろう。海中を覗きこむと複数のマオマオがホバリングしている。マオマオはクロに似た魚で、これまた海況のバロメーターになる魚である。カウアイも瀬際を走っている。今朝乗った磯から距離にして1kmも離れていないのだが、まさに別次元の海が眼前に広がっている。

バリーのアドバイスに従い、釣り座を決める。足場は水面から3〜4mと高いが、直下に根ズレするようなところはない。ただし、左右20mのあたりにハエ根が出ている。また、50mほど沖に別の瀬があり、そこにラインを巻かれると100%アウト。バリーによればその沖瀬との水道にヒラマサが回遊するそうなので、水道の前に釣り座を構える。

そしてドラマが始まった。

【magic water】
いね嫁の一投目、水道のど真ん中にポッパーを撃ち込むと、いきなりメータークラスのヒラマサが追ってきた。瀬際までついてくるが、あと一歩のところで口を使わない。自分のルアーはまだはるか沖にあって、回収は間に合わない。まつさんは少し離れた場所に入っていて、こちらが見えていない。いね嫁とヒラマサ、一対一の勝負。いね嫁の二投目、足元にちょい投げし、アクションを入れたまさにその刹那。『シュボッ!!』 瀬際1mでポッパーを引っ手繰った!!!

ヒラマサはヒットと同時に一気に沖瀬に向かった。ドラグはいね嫁が耐えられるギリギリに設定しているが、相手は容赦なくラインを出していく。10m、20m、30m…。まだ止まらない。しかし40mほどラインが出たあたりでスプールの逆転が一気に減速。そして止まった。沖瀬には届いていない。海底の根にも巻かれていない。まずは第一難関突破!!

いね嫁は、すかさずポンピングでヒラマサを寄せる。軽さとパワーを兼ね備えたWB96Rの2本目のテストロッドは、体力的に大きなハンデを背負う女性アングラーを強力にサポートし、ヒラマサとの距離が徐々に縮まっていく。しかしここで、ヒラマサが反撃に転じる。沖に頭を向けられなくなったヒラマサは、円周運動に入りながら、いね嫁の足場の右側20mのあたりに張り出したハエ根に向かう。円周運動に入った大きな魚を制御するのは不可能に近い。ヒラマサは目論見通りハエ根に到達してしまった。ハエ根を覆う巨大な昆布にリーダーが触れる感触が、いね嫁の手元に伝わる。ここで無理矢理引っ張るとブレイクすることを直感的に悟ったいね嫁は、だましだまし魚をいなし、ハエ根からヒラマサを遠ざけることに成功した。そして、ついに相手は力尽き、足元に浮く。最後は自分が海面まで降りて行って、ランディング成功!!

ヒラマサ 100cm 8.5kg!!

女性が磯からメーターヒラマサを、しかもルアータックルで獲ることが可能だと思っていた人間が果たしてどれほどいたろうか? しかし、彼女自身は以前から「目標は8kg」と公言し、このワンチャンスをものにして、見事目標を達成した。そんないね嫁を、少々の驚きと、そして最高の喜びを持って祝福した。

さて、物語には少々続きがある。

いね嫁の魚をリリースした10分後、また足元にヒラマサが回遊してきた。いね嫁の魚よりも若干細く、7〜8kgというところか。いね嫁は、さきほどのファイトで握力がなくなってしまっているので見学。自分とまつさんの2人で狙う。ペンシルポッパーで誘うが反応がイマイチなので、2人してジグを投げ込む。なかなか口を使わないが、瀬際にいるカウアイやマオマオにちょっかいを出すなど喰い気はあるようなので、しつこく攻めていると、まつさんのジグにヒット!! だが、残念ながらノットのトラブルでバレてしまった。

まつさんがノットを組みなおしている間に、またしても瀬際にヒラマサが回遊してきた。しかも、今度は群れで。まず、8kgクラスが自分のポッパーについてきたが、食わず。その後ろを見てみると、わらわらと5〜6本のヒラマサが足元に回遊してきた。すかさず再キャストし、そのなかでも一番デカイやつの注意を引くことに成功。目測15〜17kgくらいはありそうな、あからさまにデカイヒラマサ。しかし、追い方に喰い気がない。スレたシイラのような追い方である。喰わせのアクションでスイッチを入れようと試みるが、足場が高いのと魚までの距離があまりにも近すぎて、アクションを上手くいれられない。もどかしい! そして案の定ヒラマサはポッパーを見切り、視界から姿を消した。慌ててジグタックルに持ち換え、ヒラマサの進行方向にジグを撃ち込むが、もう2度とヒラマサがルアーについてくることはなかった。なんということか、千歳一遇のビッグチャンスを逃してしまうとは…。

ショアの釣りのチャンスは常に一瞬。それものにできなかった自分はまだまだ未熟だということだろう。

【bye for now】
バリー&ジャンと記念撮影。またこの地を訪れるときまで、しばしのお別れ。
結局、この群れを最後にヒラマサの回遊は終わり、回収の時間となった。来た時よりも少し波が上がっていたが、バリーが抜群の操船技術で我々を無事に回収してくれた。

宿に戻り、荷物を詰めなおして、4日間お世話になったバリーとジャンにしばしの別れを告げる。これからオークランドまで夜通し走り、朝一の飛行機で日本に帰国する。極めてハードなスケジュールに加えて、最終日の昼まで海の状況が非常に悪く、一時は後悔すらしかけた釣行だったが、最終的にはやはり来てよかったと心から思えた遠征だった。特に最後の2時間で実に多くの収穫を得ることができ、また、今回明らかになった新たな課題は釣り師としての探究心に熱い火をつけるものだった。

次回またニュージーランドで釣りをするチャンスが訪れるまで、日本の磯で答え探しと研鑽の日々が続く。

タックル1(いね)
ロッド MC Works' レイジングブルXR-2
リール ダイワ ソルティガZ6000
ライン よつあみ ウルトラジグマン 8号
リーダー ヤマシタ ニュークロー60号+100号
ルアー いろいろ

タックル2(いね)
ロッド Medusa Limited Crafts ワイルドブレーカー100HM/H
リール ダイワ ソルティガZ6000
ライン よつあみ ウルトラキャストマン 6号
リーダー ヤマシタ ニュークロー40号
ルアー MC Works' キラージグII 130g

タックル(いね嫁)
ロッド MC Works' ワイルドブレーカー96R(プロト)
リール ダイワ ソルティガZ4500
ライン よつあみ ウルトラキャストマン 4号
リーダー ヤマシタ ニュークロー30号
ルアー ポッパー