New Zealand Expedition 5

---vol.3---

別れと出会い

前回のNZ遠征から帰国して数か月経過した頃。いつも宿泊しているモーテルの女将ジャンから一通の電子メールが届いた。その内容を読んで絶句してしまう。ジャンの夫であり、いつも瀬渡しをしてくれるバリーが、急性の皮膚がんと診断され余命いくばくもないというのである。高齢だったとはいえ、元気の塊のようだったあのバリーが…。何かの間違いであって欲しいという願いも空しく、その2週間後にバリーが亡くなったという知らせが届いた。

性格も瀬渡しの腕も抜群に良かったあのバリーにもう二度と会えないかと思うと、悲しさが込み上げてくる。けれど、残された者たちはいつまでも立ち止まるわけにはいかない。もうバリーには会えないけれど、いつもニコニコ笑っていた彼の温和な笑顔を胸に、彼が授けてくれた知識と経験を武器に、再びこの地の磯に立つ。

瀬渡しの手段がなくなってしまったことをうけて、ジャンが強力な助っ人を紹介してくれた。ジム・ケンプ。この付近の海岸線に広がる牧場の持ち主であり、四輪バギーと小型ボートを駆使して敷地内の一級磯に渡すサービスをしている。ジムとは出発前に頻繁にメールで連絡をとり合い、入念に打ち合わせしておいた。そして、ジムとの初釣行日を迎えた。

快挙

牧場といっても、その大半は山であり、この山を四輪バギーで越えて海岸線に出る。筆舌に尽くしがたい悪路を超えて山頂に到達し、海が視界に入った瞬間、3人全員から「おぉ〜〜!」という歓声が上がる。目前の海、そのありとあらゆるところにベイトボールが発生している。ベイトの正体は小型のカウアイ。どのベイトボールも磯からは数百メートル離れているが、潮の具合で磯に近づけば一気にチャンスが到来するだろうことは想像に難くない。

下りも冗談のような悪路だったが(というか途中から路すらない)、なんとかバギーから振り落とされずに海岸線に辿りついた。そこから小型ボートに乗り込み、ジムのお勧めの地磯に渡る。

満潮からの下げ始め。その下げ潮が磯際にじわ〜っと差してくる。それと並行して、徐々にではあるが確実にベイトボールが近づいてくる。無駄なキャストは止め、臨戦体勢を整えたまま海を観察する。

最初に発見したのはジムだった。

「あそこに泳いでるのキングフィッシュじゃないか!?」


ジムが指さす方向に視線を向けると、1mほどの大きさの魚が3匹、背ビレを出してウロウロしている。エサを探している様子で、いかにも高活性な挙動。ダッシュで魚のいる方向に移動し、ルアーをキャスト。3回ほどアクションを入れたところで、1匹がルアーに気付いて近づいてきた。他の2匹も追随し、一つのルアーを3匹で奪い合う! ルアーの後ろでザッパンザッパン出ているが、魚も競争に焦っているのか、なかなか的を射ることができない。しかし活性は最高潮といった感じなので、瀬際でルアーを放置してプカプカ浮かせていると、なおもザッパンザッパン出まくっている。しばらく待つうちに、ようやくそのうちの1匹がルアーを捕えた。しっかりラインが張ったのを確認し、一発大きくアワセを入れる。ヒット!!

事前に相手の大きさの見当がついているので、こちらも対処がしやすい。ラインを2mほど出されるが、これをいなし、相手が止まった隙を逃さず一気に浮かせる。最後はジムがネットを入れてくれて、ランディング成功。

ヒラマサ 103cm 8.5kg!!

この魚をランディングするとき、後ろにもう1匹、ほぼ同じサイズのヒラマサがついてきているのが見えていた。ランディング終了後、すかさずいね嫁がキャスト。しかし一投目は不発。「あれ…?」と思いつつも、再キャストするいね嫁。瀬際10mほどまで引いてきたとき、「ズボッ」という鈍い音とともにルアーが消しこんだ。

ヒットと同時に猛烈な勢いでスプールが逆転する!!

いね嫁の体力と体格に合わせてドラグは5〜6kg程度に設定しているとはいえ、スプールの逆転速度が尋常じゃない。この時点で、さきほど目撃した魚ではなく、それよりも大きな別の魚がヒットしたと皆が確信する。ヒラマサのあまりのパワーにバランスを崩して転倒しそうになるが、ロッドをラインと一直線にして自らの体に掛る負担を減らし、その間に体勢を整え、再びロッドを起こして可能な限りの負荷をヒラマサに与える。

50mほど走ったところで、やっとファーストランが止まった。前回釣行で目測15kgオーバーを掛けながらも、序盤に体力を使い果たして最後の突っ込みを止められなかった反省を生かし、今回は最後の瀬際の勝負時のために体力を温存しながらファイトを展開する。

両腕と足を使ったポンピングで、負荷を全身に拡散させるいね嫁。セカンドラン、さらに立て続けにサードランが襲うが、なんとか凌いだ。ヒラマサは左に進路をとったのち、思い返したかのように右に進路を変えた。知ってか知らずか、右のほうが瀬際の根が断然荒い。横で見ている自分は一瞬「マズいな…」と思ったのだが、三度に渡るランで体力を使い果たしたヒラマサには、もうラインを引き出す力は残されていなかった。瀬の右側沖の海中にギラリと姿が見える。

ここからが最後の勝負どころ!!

いね嫁は、温存していた力をここで一気に発揮して、全力で魚を浮かせにかかる。とにかくリールを巻いて巻いて巻いて巻く!! このゲームプランが見事にハマり、瀬際に寄った時点で魚体をハエ根の上にもってくることに成功した。ヒラマサはハエ根の上を横向きに泳ぎながら左へと進み、理想的なランディングポイントでついに魚体がぽっかりと海面に浮いた。

想像していたよりもさらにデカイ!!

ネットに対して魚体が長すぎるので、自分が魚体を後ろから押して、ジムが構えるネットに滑り込ませる。ネットにフックが掛からないように、慎重にネットに魚体を収めた。そしてジムと2人掛りで磯上に引きずり上げ、ランディング成功!!

ヒラマサ 121cm 18kg!!!!

いね嫁にとって、ニュージーランド遠征はいつも大きな成長の場となってきた。これまで、その傍にはいつもバリーの姿があった。そして今回、ジムという新たな仲間の協力を得て達成したこの成果を、天国のバリーに捧げたい。

バリー、やったよ!

タックル(いね)
ロッド MC Works' レイジングブルXR-1
リール ダイワ ソルティガZ6000
ライン よつあみ ウルトラキャストマン 5号
リーダー ユニチカ 飛翔 30号
ルアー プラグ

タックル(いね嫁)
ロッド MC Works' ワイルドブレーカー96R
リール ダイワ ソルティガZ4500
ライン よつあみ ウルトラキャストマン 4号
リーダー ユニチカ 飛翔 30号
ルアー タイドプール プロトプラグ 16cm