当初は開幕が早くなるかと思われた堤防シイラ2003年シーズンだったが、結局シイラの本回遊が始まったのは9月半ばを過ぎてからだった。

仕事の関係で9月の半ばにフィンランドに渡航したため、この年のシイラはもう諦めかけていたのだが、とても都合の良いことに10月半ばにフィンランドから日本に出張する機会を得た。実際の出張先は北海道だったのだが、フィンランドから日本の距離に比べれば、北海道-九州間の距離など無に等しい。というわけで、「このチャンスを逃してなるものか!」と、半ば無理矢理釣行計画を立てたのだった。日本に滞在する10日間のうち、3日目と4日目を丸々釣行に当てることができるようにしたが、まったく休まる暇のない超強行スケジュールである。

9月は大型中心の群れが入っていたようで、130オーバー当たり前、中には140オーバーの良型もキャッチされていたという。ところが、10月に入ってから北東風がピタリと止んでしまったらしく、アゴとシイラの気配が薄く芳しくない状況でのトライとなった。せっかく遠路はるばる来たのにそれはないだろう、という感じだが、文句を言っていても状況が好転するわけではない。わずか二日間という限られた時間のなかで、なんとか結果を出すしかないのである。

ほぼ不眠状態で生月に到着したのは午前4時。1時間ほど仮眠をとったところでsweepさんと合流し、初日の釣行開始。朝6時には堤防に立ち、夜明けとともに通いなれた海にキャストを開始する。すでに初冬の様相を呈していた10月のフィンランドから移動してきたため、九州の秋の日差しがたまらなく眩しい。北欧の気候の中で忘れかけていた潮風の匂いを感じるだけでも、ここに来て良かったと感じる。肝心の風だが、風速5m程度で北東から吹いており、状況的には悪くない。だが、この年は風が吹いても回遊がないという話も聞いていたので、やや不安だったのも事実である。

悪い予感は的中する。やはり回遊がない。いくら投げどもまったく反応がないため、sweepさんと相談の末、場所を移動する。移動先で、sweepさんの一投目にシイラのチェイスがあったそうだが、ヒットには至らず。その後もsweepさんに二度ほどチェイスやミスバイトがあったようだが、自分にはまったく音沙汰なし。あまりに無機質でシュールな海に、寝不足からくる疲労がどっと増し、ついつい堤防に横になってしまった。ちょっとお昼寝タイム。連鎖反応でsweepさんもご就寝zzz

目が覚めてからキャストを再開するが、やはり反応はない。そうこうしていると、朝入っていた場所でシイラの回遊があったという情報をキャッチし、即移動。朝から入っていたアングラーに聞くと、なんでも我々が移動した直後に回遊があったらしい。うまくいかないときというのは、何もかもが裏目に出るものである。とはいえ、やっとシイラが戻ってきたと前向きに捉え、キャストを再開する。

ところがそう話はうまくいかず、我々が午後2時半ごろに戻ってきてから午後4時すぎまで、まったく一回たりともシイラの回遊はナシ。前の晩ほとんど寝ていないとはいえども昼寝をしているので体力的にはまだまだ元気なのだが、こうも外しっぱなしだと精神的に疲れてくる。このような八方塞りに近い状況をアングラー側から打破するのは容易ではない。しかし、一匹の魚にはその力がある。このあと、それを実感することになる。

午後4時半。SAURUS Deck Stick 90 "Jiggin'"から放たれたアゴペンは、これまでどおりの放物線を描き、着水する。この日、このタックルで何度キャストしたかわからないが、リトリーブ時には必ずルアーの後方に集中し、魚の気配を探してきた。そして、ついにこのとき、ルアーの後ろにコバルトブルーの影を発見!! すかさず食わせのアクションを入れるが、ベイトが少ない影響からか、活性が低く今一歩のところで口を使わない。そこでアゴペンを見切り、ufm PPGT-932HにセットしたK-TEN 175Sをシイラの進行方向にキャスト。すると、着水と同時に一気にシイラが突っ込んでくる!! シイラとルアーの距離があと1mと迫ったところでトゥイッチを入れてやると、ガッツリと喰ってきた。

トップやジグを使っていた周りのアングラーは、sweepさんも含めて誰もヒットに持ち込めていなかったので、「おぉ〜」と歓声を上げてくれている。自分にとって今年のファーストシイラであることも含めて、素直に嬉しい。久々のドルフィンジャンプをしばし堪能するが、貴重な一匹なのであまり遊ばせず一気にランディング。

110cmのメス。特筆すべきサイズではないが、とにかく一本が出たので本当にホッとした。こんなスケジュールで釣りに来ているのですでに周りからはアホ扱いだが、これでノーフィッシュだったときには本当のアホになりかねないため、正直安心した。

手早くこのシイラを解体し、クーラーに収納してキャスト再開。広い範囲でシイラを探すために、Deck Stickでアゴペンを沖目にフルキャスト。リトリーブ開始後、ほどなくしてまたシイラのチェイス!! 一本目を釣ってプレッシャーから開放されたため、今度は楽しみながら誘いのアクションを入れる余裕がある。「喰えっ…喰った!!

フッキングの違和感を感じたシイラは、ジャンプを繰り返しながら手前に走ってくる。最もラインテンションが緩みやすいパターンだ。こちらも負けじとラインを巻き取り、ジャンプのタイミングに合わせてロッドを持ち上げ、テンションを抜かないように心がけながらファイトする。手前に走ってきたため、短時間のファイトでランディングまで持ち込めた。

117cmと、メスにしてはなかなかのサイズである。実は、さっきの110cmのシイラに、前シーズン身につけた必殺のアゴペンアクションを初めて見切られ、かなりショックだったのだが、今度のシイラには完璧に効いたようだ。二度も連続でアゴペンで失敗したら、ちょっと松永さんに申し訳ないので一安心した。

それにしても、このタフな状況下で、たったの2投で2本のシイラをキャッチできるとは、なんたる幸運だろう。シイラがチェイスしてきてから、喰わせてランディングするまでは自分の技術の問題だが、そもそもシイラが射程距離に入ってきてくれなければどうにもならないわけだから、このわずか30分の間は本当に強運を身につけていたんだと思う。

このシイラを解体していているときに、胃の内容物をチェックしてみると、かなり珍しいものが入っていた。まず、イカ。以前、タコが入っていたのを見たことがあるが、イカは初めてである。ここに写っているものの他にも、イカのクチバシが数個出てきた。そして、タチウオ釣りの仕掛けらしき漁師仕掛け。引きちぎったものをそのまま飲み込んでいたようである。肝心のアゴは一匹のみで、この日の厳しい状況をそのまま反映したかのような内容物だった。

この2本で他のアングラーのやる気も再び出てきたようで、続けとばかりに皆でキャストを繰り返すが、その後回遊はなく、この日はこれで終了となった。

Tidepoolに寄って、松永さんに本日の報告。しばし雑談をしていると、天気予報どおり北東風から北西風に変わり始めてきた。明日はさらに厳しくなるなぁというのが3人の一致した意見であるが、明日も朝から頑張るしかない。晩飯を食べにカレーが美味しいパヤラに行ってみるが、連休明けのためか休業。結局平戸まで行き、定食屋でsweepさんに飯をおごってもらった。生月に戻り、明日の幸運を祈りながらしばしの休息…

さて、二日目の朝である。本日は南極くんが合流し、3人で攻めることになったが、案の定北西風に変わっており、アゴの気配はまったくない。それでも何度かシイラの回遊があったのだが、すこぶる活性が低く、シイラを追いかけてキャストを繰り返してもまったく口を使わない。前日ハマったK-TEN 175Sにすら振り向きもしないとなると、手の打ちようがない。

南極くんと2人で魚の気配を探るが、北西風の生月の海は、その本来の生気を、逞しさを失っているかのように、ただだた静かで、穏やかで、平和である。sweepさんは堤防に横になってまどろみのひとときを堪能している。

そんなとき、sweepさんの隣のアングラーがアゴが跳ねるのを発見した。その気配を察知したsweepさんは、瞬時に立ち上がり、即キャスト。否、立ち上がりながらキャスト!! 自分もキャストしながらsweepさんのルアーに注目していると、案の定sweepさんのルアーにシイラがもんどりうってヒット!! 派手な渦を巻きシイラが抵抗しているところにしっかりアワセを入れたsweepさんだったが、残念なことにフックアウトしてしまった。強運を味方にしかけたかと思われただけに、惜しい一幕だった。

その後はこれといって動きもなく、翌日の早朝には北海道に向けて飛ばねばならないため、やや早めに切り上げることにした。全体的には非常に厳しかったが、そんな状況で2本のシイラを手にすることが出来たので、自分としては納得のいく釣りができた。また来年である。sweepさんと南極くんに近い日の再会を誓い、生月をあとにした。

なお後日談であるが、翌日まで生月に残っていた南極くんが、Tidepoolで購入したアゴペンで見事114cmのメスをゲットしたそうだ。彼にとっての正真正銘のファーストシイラ。おめでとう!

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